森 達也 氏

森 達也 氏

豊田:今日はお越しいただきましてありがとうございました……というひと言を申し上げるために登壇しました。豊田と申します。今日はありがとうございます。

安岡:今日はご来場いただきましてありがとうございます。編集を担当しました安岡でございます。今日は大勢の方にお越しいただきましてありがたく思っております。よろしくお願いいたします。

野田:共同監督の野田と申します。途中休憩を5分間挟んではいるんですけれども、その間、誰一人として帰られた方がいないということをすごく嬉しく思います。このあとトークに入りますので、もう少しお付き合いください。

豊田:今日のゲストの森達也さんです。安岡さんと一緒に『A』、『A2』をつくった仲間だということと、私は(招致ゲスト同士として)ピースボートで何度かご一緒して、2人でサファリで小さなテントに泊まったという縁で、今日来ていただきました。あとはご自由に。

森:長時間お疲れさまでした。ありがとうございました。まずは感想の前に、トークショーというのはお客さんを一人でも二人でも多く呼び込むためにあるんですけど、なんら必要のないトークショーになってしまいましたね。しかも、時間もそうとうないということで、やらなくてもいいんじゃないかな、という気もするんですが(笑)
一応、来たので少しだけお話をしようと思います。感想の前に、まずはうらやましいですね。私の『A』、『A2』は安岡と二人でつくったんですが、ここで上映しました。ハァ……。しかも平日の昼間で、この入りというのは……。一人ひとり聞きたいくらいですよね。どうしたんですか、と。まあ、でもよかったですね、本当に。

豊田:ありがたいことです、本当に。

森:これでもしロングランになったら、もう「よかったですね」は超えますね。足を引っ張りだすと思います(笑)
長いです。3時間45分ありますけども、おそらく「これは長すぎる。退屈だよ」と思った人は、誰一人いないんじゃないかなという気がします。つまり長さって、作品なんですよね。1時間半の作品だったら1時間半の本質があるし、3時間45分だったら3時間45分の意味と必然性があるからそうなるわけで、そういう意味ではおそらくこの編集でよかったんだと思います。それで、また私の話になりますが、実は私も『A』の編集をした時、いちばん最初の編集をした時には4時間ちょっとあったんですね。でもこれ以上切れない。ダイエットでいえば、ダイエットは無駄な肉を削るわけですが、骨と皮と筋肉と血管しかないわけです。これ以上切れない、と安岡に観せたら、「切れ。劇場が絶対これは嫌がる」と。それで泣きながら2時間15分にしました。なんで今回出来たの? まぁ自分が編集やったからでしょ。

安岡:だって切れないもんね(笑)

森:『A』は切れたの?

安岡:あれは、いっぱい切れた。

森:憎たらしいなあ。それも含めてうらやましいです。こういった時間の作品をつくれたということは。
感想は、時間もないので手短かに言いますが、ドキュメンタリーというのは人格なんですよ。人間です。だから今日、ここに一人の、これは豊田さんと野田さんの二人の人格を皆さん見たわけで、それに尽きます。とても誠実です。とても誠実で、決してお喋りじゃないけれど、大事なことは伝えてくれます。
もう1つ、ドキュメンタリーというのはイデオロギーじゃ駄目だと思います。テーマを押しつける作品は駄目だと思います。テーマに回収されてしまっている作品は駄目なんです。つまり、当然ながら、これは原発「是か非か」という話にもなるわけですが、だったら紙にスローガンを書いてみればいいわけです。「原発は絶対になくしましょう」と。そこでやっぱり私たちは3時間45分、何を見たのか。人を見たわけですね。色々な人を。陽気な人、ちょっと寡黙な人、ちょっとシャイな人、内気な人、自分を追い詰めてしまった人。いっぱい色々な人が出てきます。それによって僕らは考えるわけです。原発ってなんなのか。スローガンありきじゃないわけです。まずは人を見る。人の生活を見る。人の喜怒哀楽を見る。人と土地を考える。考えながら見る。テレビの番組は、そうじゃないです。メッセージをただ伝えるだけ。ドキュメンタリーは、そうじゃないです。しかも映画ですからね。考えながら見る。だからもう、たぶん皆さんいまも考えていると思う。それでいいんです。ここで僕がまとめる必要もないし、皆さんそれぞれの感想で、今日帰っていただければと思います。

安岡:すみません。切れなかったですね。1年くらいずっとこれ(豊田・野田監督が撮りためた未編集の撮影テープ)を見てました。そうすると、1家族、1家族の時間みたいなものが入ってくる。

森:だから制作者は切れないんですよ。

安岡:ひと言いわせてください。私はまだ一歩も飯舘に入ったことはありません。本来そうあるべきだなと思っています。編集する人間は映像だけで判断して。豊田さん、野田さんには(被災者や被災地への)ものすごく深い思いがある。その思いを自分の中に構えちゃうとクールになれない。(撮影された映像素材としての)「画(え)」に寄り添うというのが、編集の仕事。つまり撮れたものが何かということをよく見定めて、切れるところを切っていくわけです。ここに登場した皆さんの生活が見えてきて、これ最初は本当に2時間くらいにしなきゃ駄目なんだろうなと思いました。思ったんですよ。私はわりとそういうポリシーなんですよ。森さんが先ほど言ったように、映画館でかけられる時間は限られているし、だらだら長いのは大嫌いです。
切り始めてみたら、これを2時間にするということは、登場する家族を減らすことだという風に思いました。それはしちゃいけない素材じゃないかなと。

森:(『A』や『A2』では)僕は登場するオウム信者は全部切りましたけどね。

安岡:あのオウムの信者って生活が見えないでしょ。感情が出ない。お話がアウトラインで終わっちゃう人がいっぱいいて。自分の中で、「切れる切れる」と思っちゃいました。

森:問い詰めても仕方ないけど。お互い歳とったね。

安岡:そうね、髭が白くなったもんね。

森:時間があと少しあるので、野田さんからもひと言もらいたいのですが、その前に。4月くらいに『パンドラの約束』というアメリカのドキュメンタリー映画が公開されます。原発推進映画です。コメントがほしいということで配給会社からDVDが送られてきて、観ました。一緒にチラシが送られてきました。サンダンス映画祭で上映されているんですが、「原発反対の8割が、これを観て原発推進に変わったという衝撃の映画」という風に書いてありました。皆さん、ぜひ足を運んでください。「よし、説得されよう」と思って僕も観ました。もうあきれ返りましたね。詳しくほかの映画の話をしてもしょうがないのだけど、とにかくどうしようもない、むちゃくちゃです。チェルノブイリに行っても、チェルノブイリの人がいかに幸せに暮らしているかということを描いている。まさしくイデオロギーに回収されてしまうという映画です。何の思い入れもない。だからそういうコメントを書きました。ただし、この映画の価値は、原発に反対する人たちが自信を深めることができる、そこに価値がある、と書きました。ボツにされました。非常に頭にきました。自民党では自民党内で試写会をやっていて非常に大喜びしていたそうです。コメントを書いたのは、あとは東電関係者とか、櫻井よしこさんが大絶賛。だから、ぜひ僕は自分のコメントを入れたかったけど、どうしてもOKしてくれないので、この場で。ぜひ皆さん、行って笑ってください。

豊田:そのことでひと言だけ。実は僕らも、この映画の35分版のダイジェスト部分をつくって国会の議員会館で上映させてもらいました。残念ながら35分間なんですよ。だからある意味、「意味」しか伝えられない。野田が編集したんですが、その「意味」の部分は、「あの総理がどうだ、この総理がどうだと言ってる場合じゃないでしょ」と亡くなった重清さんのお姉さんが言っている場面です。まさにその時の総理の菅さんがいまして、集まったのは自民党からは残念ながら河野太郎さんともう一人、原発ゼロの会の人。一方で、そういった人も全党派。それから維新の会でも原発ゼロにしたいという人たちが来てくれました。そういった意味でも、皆さんが声をあげてくれれば、これを全編、本会議場で上映したいですよね。ぜひそういうリクエストを出していただければ、「あの総理が」というところだけじゃないかたちができればいいなと思っております。

森:だって安倍さん、この前ローリングストーンズ聴きに行ってるでしょ。その時間あったらこれ観に来い、ってね。

豊田:ぜひそういうのを手紙とか電話とかファックスで官邸に送っていただいて。
で、野田さん、ひと言。

野田:(会場から「東電にも観せよう」という声)東電ですよね。ぜひ送りたいと思っています。あそこの会場でやりたいと思っています。もしくは、やれない場合は、こんなことできるかどうかわからないけど、ビルに投影するとかいうアクションもあるみたいなので、そういったこともどんどん考えていきたいと思っています。今日はこれだけの方に観ていただいて、どうやってこれを全国に展開していけるかということを、いまから考えていかなければいけないんですけれども。

豊田:みなさんお手元に紙があるでしょ。

野田:はい、お手元の紙を配っております。ネット募金ということでクラウドファンディングの、配給・宣伝広告費の募金のお願いと、もう1つは自主上映のことを書いています。実は今回、8月1日から自主上映を全国に広げて行きたいという風に思っています。ぜひ色々な街で上映出来るように、皆さん広げていただければと思います。それと、大事なお知らせがあるので豊田さんのほうからお願いします。

豊田:実は今日、皆さんここに入っていただいただけではなくて、1階のほうにも特別会場をつくって60名の方にお入りいただいて上映させていただきました。にもかかわらず、今日も30名程度の方にお帰りいただかざるを得ない状況になりました。そこで劇場側にもかけあって、急遽15日、なかのZEROの視聴覚ホールをおさえることができたので、朝9時から13時と、13時から17時で、2回上映することが決まりました。それから、ここポレポレ東中野でプログラムを入れ替えてもらって3月22日から28日まで、この時間帯は無理なのですが、19時から23時で上映することが決まりました。ですので、皆さんのご友人の中でもまだ来てない方がいらっしゃったり、前売り券をお持ちの方がいらっしゃったら、なかのZEROもポレポレの前売り券でそのまま入れるかたちにしましたし、(ポレポレ東中野での)レイトショーでも同じかたちで使っていただけるようにしましたので、皆さんのご友人にご案内していただければと思います。
今日は長い時間、本当にありがとうございました。

講演文字起し Kiku Ito(ボランティアスタッフ)
構成・整理 Sawa(ボランティアスタッフ)